交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害逸失利益①)

4月となり、出勤時に新入社員なのかな?と思われる若い方を見かけることが多くなりました。
私も含め、弊事務所の新人弁護士の入所時期は4月ではなく12月なのですが(司法修習が終わり、二回試験の結果が出て法曹となる資格を得るのが12月半ば→結果が出次第すぐに入所となるため)、それでも4月になるとなんとなく初々しい気持ちになってしまいます。

前回では、弁護士基準と自賠責基準で基準が大きく違う項目の2つ目として、「後遺障害慰謝料」のお話をさせていただきました。
今回は、「後遺障害逸失利益」のお話をさせていただきます。

そもそも、後遺障害逸失利益とは何か?ですが、簡単に言えば「交通事故による怪我で後遺障害が生じなければ事故前と同じように今後も100パーセントの能力で仕事ができたはずなのに、後遺障害によってその能力が一部または全部失われてしまったことにより被害者が被った不利益を補填するもの」です。
後遺障害によってどれだけの不利益が生じたかについては、個々の被害者ごとに個別具体的に算出するのではなく、後遺障害の等級や種類に応じて類型的に「労働能力喪失率」としてパーセンテージが決められています。

この労働能力喪失率に、被害者の基礎収入と労働能力喪失期間に相当するライプニッツ係数を掛けたものが、後遺障害逸失利益となります。

ここまで読んで、「労働能力喪失率があらかじめ決まっているのなら、自賠責基準で計算しようが弁護士に依頼しようが特に変わらないのでは?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、労働能力喪失率に争いがあるごく一部の事案を除き、パーセンテージの部分については基本的には変わりません。
ところが、自賠責基準の場合は、後遺障害等級に応じて支払われる金額に上限があるため、実際に生じた逸失利益を全額支払ってもらえるわけではないのです。

例えば、後遺障害14級が認定された場合、後遺障害慰謝料として32万円、後遺障害逸失利益として43万円の、合わせて75万円を上限として支払われますが、本来であれば多くの方が上限を超えることが予想されます。
仮に、後遺障害14級(労働能力喪失率5パーセント)、基礎収入200万円、労働能力喪失期間5年(ライプニッツ係数4.594)とすると、計算上は200万円×0.05×4.594=45万9400円となるはずですが、前述のとおり自賠責基準では上限が43万円となるので、上限を超えた2万9400円分は受け取れないことになります。

保険会社各社が被害者あてに出してくる示談書の内訳を長年見ていると、傷害慰謝料や休業損害は自賠責基準ではなく「弊社基準」(自賠責基準より若干高いが、弁護士基準よりはだいぶ低めです)で出してくることが多い一方で、なぜか後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益は自賠責基準どおりの金額で出してくることが多いので、相手方保険会社任せにしていると本来受け取れるはずの後遺障害逸失利益より低い金額で示談させられてしまう可能性があります。

また、それ以外にも、保険会社任せにした場合と弁護士に依頼した場合では、そもそも①労働能力喪失期間が何年か、②基礎年収をいくらとするか、の2点が大きく異なる場合があり、本来であれば計算式自体が違うということも十分あり得ますので、弁護士に依頼することで金額が非常に大きく変わるケースも少なからずあります。

次回は、この①について解説していきたいと思います。