会社役員の休業損害
1 会社役員の休業損害について
会社役員についても、休業損害が認められる可能性はあります。
しかし、多くの場合、会社役員については、休業損害が認められないと加害者側から主張されています。
その理由と、会社役員でも休業損害を請求する場合の注意点について、以下でご説明していきます。
2 休業損害が認められないと主張されてしまう理由
多くの会社役員の場合、年間の役員報酬があらかじめ定まっており、仮に休業したとしても収入が減少されません。
その理由は、法人税が増額されてしまうからです。
税法上、役員報酬は経費として計上されるため、役員報酬として支払った額は、会社の利益には含まれません。
ただし、これには条件があり、事業年度の途中で増減がないことが必要です。
事業年度途中で役員報酬が減額されると、その事業年度内に支払われた月額報酬のうち、減額後の月額報酬の額を超える額については、利益として扱われてしまい、法人税の課税対象となるのです。
そうすると、会社としては、働けていないために役員報酬を減額したいと考えても、結局税金を支払わなければならなくなる可能性があったり、手続きが面倒だったりするため減額しづらいのです。
しかも、法人税の課税対象となった額については、支給されている以上所得税もかかるため、二重に税金を支払わなければならなくなる可能性があるのです。
このようなことから、多くの場合、交通事故により休業したとしても、役員報酬が減額されていないのです。
そのため、休業したとしても収入が減少されないとして、加害者側から休業損害が認められないと主張されることが多くあります。
3 役員報酬・給料等が減額された場合でも請求には注意が必要
会社役員の場合、収入が減少したとしても、直ちにその全額が休業損害として賠償対象となるわけではないという点に注意が必要です。
会社役員の報酬は、労務提供の対価としての性質を持つ部分と利益配当としての性質を持つ部分とが混在しているといわれています。
利益配当としての性質を持つ部分は、就労とは無関係であるため、休業損害の対象とはならないと考えられています。
そのため、休業損害の対象となるのは、労務提供の対価としての性質を持つ部分となります。
ただし、役員報酬について、労務提供の対価としての性質を持つ部分と利益配当としての性質を持つ部分が明確化されていることはほぼありません。
そのため、個別事情に応じて、労務提供の対価としての性質を持つ部分の範囲を確定する必要があります。
また、役員と従業員を兼ねている場合には、労務提供の対価部分と利益配当の部分を分けて、減額された部分を立証する必要があります。
4 交通事故に詳しい弁護士に依頼しましょう
これらをしっかりと主張、立証するのは困難ですので、会社役員の方が休業損害を請求しようと考えるのであれば、弁護士に依頼をすることをおすすめします。
当法人では、池袋の交通事故案件にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。