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債務整理が家族や勤務先に知られる可能性について

  • 文責:所長 弁護士 田中浩登
  • 最終更新日:2021年1月5日

1 はじめに

債務整理をするにあたって、家族や勤務先に知られたくないと考え、相談に踏み切れない方も多いのではないかと思います。

債務整理をするにあたって、どのような場合に家族や勤務先に知られる可能性があるのかについてまとめてみました。

2 任意整理の場合

⑴ 任意整理の情報が洩れる可能性は基本的に低いといえます

任意整理をすると、家族や友人、近所の人、同僚の方などに知られてしまう心配は基本的にそれほどないといえます。

任意整理は、裁判外で行う交渉ですので、裁判手続である自己破産や個人再生と異なり、官報に公告されることはありません。

また、任意整理をすると、いわゆるブラックリストに登録されます。

しかし、ブラックリストは、本人または本人の委任を受けた人でなければ見ることができませんので、ここから家族や勤務先に知られることは通常ないでしょう。

したがって、自己破産や個人再生に比べれば、家族や会社の同僚に知られてしまうという可能性は低いでしょう。

⑵ 家族等が保証人となっている場合

家族や周りの人たちが、任意整理をした債権の保証人等になっている場合は、任意整理をすると、債権者から連絡がいく場合があります。

通常、ある保証人付きの債権について任意整理が開始されると、債権者は、その保証人に対して一括支払いの請求をすることになります。

したがって、保証人である家族や周りの人に知られてしまうことになります。

⑶ 貸金返還請求訴訟を提起された場合

貸金業者は、弁護士等から受任通知が送付されてくると、債務者に直接の取り立てをすることはできなくなります。

しかしながら、債務者に対して借金の返還を求める訴訟(貸金返還請求訴訟)を提起することは可能です。

貸金業者によってまちまちですが、滞納期間が長かったり、和解までの期間が長引いたりすると、貸金業者が訴訟を提起してくることが多いです。

貸金返還請求訴訟が提起されると、裁判所からご自宅に訴状が送達されます。そのため、同居の家族の方などには、その訴状を見られてしまう可能性があります。

⑷ 給料等を差し押さえられた場合

また、上記の貸金返還請求訴訟後、債権者が給料を差し押さえるという場合があります。

勤務先が知られていなければ給料を差し押さえられることはありませんが、通常は、借金をするときに勤務先を記載していると思いますので、転職などしていない限り、給料が差し押さえられるということは考えられます。

給料が差し押えられると、裁判所から勤務先に差押命令が送達されることになりますので、債務整理をしていることなどが勤務先に知られてしまうことになります。

3 自己破産の場合

自己破産の場合には、就業に一定の制限があり、破産の手続中は、一定の職業等に就くことができなくなります。

そのため、自己破産をする場合、勤務先に知られてしまう可能性が高いといえます。

具体的には、弁護士などの士業、会社の取締役や執行役、監査役、古物商の免許がいる質屋、警備業や生命保険の募集人等がこれに当たります。

参考リンク:裁判所・自己破産の申立てを考えている方へ

なお、自己破産の手続が終わり、免責の許可決定が確定した後は制限がなくなりますので、当該職業に復帰することも可能です。

4 勤務先からの資料の提出が必要な場合

自己破産や個人再生の申立ての際に、退職金の見込額の証明書等を提出する必要があります。

このような資料の提出を会社に求めることにより、自己破産や個人再生の申立ての準備をしていると知られてしまう可能性があります。

もっとも、退職金については、退職金規程等により申立ての時点で退職した場合の金額を算出できる場合には、会社に見込額の証明書等の発行を依頼する必要はないと思われます。

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